韓国最大のネット会社NAVER(ネイバー)ニュースによると新型コロナ感染拡大で韓国社会に混乱を巻き起こしている単立サラン(愛)第一教会(ソウル城北区)主任牧師を務めるチョン・グァンフン氏が韓国基督教総連合会(韓基総=通称CCK)代表会長を辞任する意向を伝えた。突然の一方的な辞意表明にキリスト教界が揺れている。本紙の解説を交え紹介する。

21日夜、突然、音声で韓国基督教総連合会代表会長を辞任すると述べたチョン・グァンフン牧師(画像:教会と信仰)

チョン牧師の教会でクラスターが発生。2月の新天地による感染被害拡大を超える状況の中、自身も新型コロナウイルスに感染し隔離入院中だ。21日午後9時頃、韓基総元報道担当イ・ウンジェ牧師が運営するYouTube放送を通じて事前に録音したと思われる音声を公開し、「韓基総代表会長を辞任しようと思う」と伝えた。チョン牧師の声はかすれており、咳き込む様子からコロナ感染者に特有の症状がうかがえた。本人は陽性判定についても政府の陰謀論を訴え続けている。

チョン牧師の辞任表明は一方的に本人から発信されたもので韓基総は公式に何も反応していない。22日午前現在、同連合会の公式サイトにはチョン牧師の辞任について一切触れず、反政府的なコメントだけが目立つ状態だ。これを見ても韓基総が極端な政治思想に傾倒していることがわかる。辞任表明を受け、1年7ヶ月に及ぶ、長いようで短かったチョン・グァンフン時代が終わろうとしている。

チョン牧師は保守プロテスタント教団のひとつ大韓イエス教長老会白石大神教団の牧師として2019年1月末に韓基総代表会長に選出された。今年はじめに再選されたものの反政府集会や公務中に特定の保守派政党への支持を呼びかけ、公職選挙法違反の容疑で逮捕された。その後、5月に保釈が認められたが裁判所は韓基総代表会長の職務停止仮処分申請を認め、事実上、職務停止状態にあった。現在は裁判所が派遣した弁護士が代行を務めている。

本紙、異端・カルト110番の取材でチョン牧師の周辺事情がわかった。実際にチョン牧師の言動は目に余るものがあった。暴言では済まされないような発言を公然と繰り返した。韓基総関係者によると「精神状態が普通ではなかった。話す言葉が暴力的だった。いつも人を嘲笑ったような表情をしていた」という。チョン牧師が会長に就任すると韓基総は反政府集会、極右勢力の対策事務所のようになったという情報もある。「決してすべての人(職員・関係者)がチョン牧師を支持しているわけではない」。迷惑だと感じる関係者もいることがわかった。彼は会長権限を最大限利用するようになってしまった。

チョン牧師の登場は韓国の保守プロテスタント教界にとどまらず、韓国社会を混乱させた。本紙共同代表の張清益(チャン・チョンイク)牧師(日本キリスト教異端相談所所長)は「チョン牧師は何度も保守キリスト教政党を作ると発言しては賛同を募り、何度も失敗した。彼が声を上げるたびに回りは振り回されてきた」とチョン牧師の無責任さを指摘した。

韓基総は1989年、韓国キリスト教界の重鎮だった故ハン・ギョンジク牧師を中心に保守系福音派指導者らが中心となって創立した連合団体だ。韓国の主要教団が次々と加入し、聖書の教えに基づく一致と協力、社会への模範を示そうと精力的に活動を続けた。

NAVER(ネイバー) ニュースは次のように報じた。「韓基総は創立後、保守プロテスタント教界を代表する韓国で最大級のキリスト教連合に成長した。大統領主催の宗教指導者懇談会にもよく招かれた。韓基総は社会的にも影響力をもつようになる。この社会的信用と地位を巡って2000年に入り、代表会長選挙で不正が横行した。2010年以降、代表会長選挙を巡り、賄賂のやり取りが活発に行なわれるようになる。いわゆる金権選挙問題だ。そして、会長が異端カルト教団を加入させる事件が発生、大論争に発展した。この問題を受け、主要教団は相次いで離脱した。」

韓基総が異端解除した主な教団と指導者は下記のとおり(異端・カルト110番調べ)。

タラッパン運動・RUTC・レムナント運動(世界福音化伝道協会)ソウルインマヌエル教会 柳光洙牧師(リュ・ガンス)
平康第一教会(旧・大成教会)故・朴潤植(パク・ユンシク)救済史シリーズ
大韓イエス教長老会合同福音教団(現・合福)張在亨(ジャン・ジェヒョン)別名・デイビッド・ジャン クリスチャントゥデイ創設者
愛する教会(旧・大信仰教会) 邊承祐(ピョン・スンウ)買収容疑で在宅起訴 公判中

上記の指導者は韓国主要教団が異端、カルトとして総会決議で規定している。ピョン・スンウ氏を除く3氏の教会と関連事業体は日本でも活発に活動している。詳しくはこちら

さらに、2012年に韓国教会連合(韓教連)、2017年には韓国教会総連合(韓教総)など、韓基総に代わる新しい保守プロテスタント系連合団体が設立され、韓基総はかつてのブランド名と看板だけが残された状態になった。韓国教会では韓基総(CCK)の社会的信用と地位は極めて低い。しかし、宗教的事情をよく知らない一部のキリスト教信者や一般人にとって、韓基総は依然としてキリスト教界を代表する連合機関であるというイメージが残されたままだった。世界の福音派を代表する世界福音同盟(WEA)も韓基総が異端解除した張在亨氏と前任の国際総主事との不健全な関係があり、現在も韓基総は韓国からの加盟団体のままで宣教協力関係を継続している。海外では韓国の教会事情をよく把握できていないのだ。異端・カルトはそれを利用して韓教総が自分たちの団体を異端解除したことを利用し、韓国のキリスト教界全体から受け入れられたかのように粉飾している。

チョン牧師は1983年、ソウル踏十里(タプシプリ)に「サラン(愛)第一教会」を開拓し、1995年、現在の城北区長位洞(ソンブッグ・チャンウィドン)に移転し、現在まで主任牧師を務めている。

彼は2000年代に入り「清教徒(ピューリタン)訓練を通じて民族福音化を成し遂げる」とし、清教徒霊性訓練院長として全国で集会を開催してからプロテスタント界の注目を集め始めた。チョン牧師は「北朝鮮核廃棄国民大会」などを主催し、サラン(愛)第一教会担任牧師よりも清教徒霊性訓練院長としての知名度が高い。2014年には大韓イエス教長老会白石大神教団の総会長を務めた。国政にも強い関心を示し、2008年以降から国会議員選挙のたびに保守キリスト教政党を結成。落選を繰り返した。

2019年、韓基総代表会長に選出されたチョン牧師は就任記者会見で「文在寅(ムン・ジェイン)大統領は北朝鮮のスパイだと疑っている」と発言した。チョン牧師を知る関係者は「落選続きで国へ疑心を抱くようになったのでは」と述べる。事実、彼の反政府感情は常軌を逸しているからだ。その後、光化門の大通りを占拠して大統領を糾弾する大規模反政府集会を主導した。それをチョン牧師は韓基総の団体名で開催し、批判が集中した。2020年4月、公職選挙法違反の容疑で逮捕。健康上の理由で保釈された。しかし、保釈後も政府への攻撃はエスカレートする一方だった。

8月15日、日本の終戦記念日にあたる光復節で再び禁止されている反政府集会を開催すると予告していた。この間も政府と韓基総は激しく対立していた。サラン(愛)第一教会で新型コロナのクラスターが発生。2月には新天地の信者から発生した感染拡大で韓国は大変な被害を受けた。今回は首都ソウルで発生したため「首都圏コロナ」と呼ばれ、市民に震撼が走った。第二波を警戒する最中に起きた被害は新天地をはるかに超える速度で一気にソウル中に広がってしまった。首都機能の一部が麻痺している状態だ。感染を恐れ飲食店は店を閉めているところもある。

チョン牧師は「予防対策は万全だった」と強調。しかし、国からの具体的な対策を無視したサラン(愛)第一教会では連日感染者が続出した。恐れていた首都が震源地となった。多くの問題を繰り返したチョン牧師がキリスト教界で孤立する決定的な事件が今回のクラスターだった。韓教総、韓国基督教牧会者協議会、などプロテスタント団体は一斉にサラン(愛)第一教会とチョン牧師の不誠実な対応を批判。諸団体はキリスト教界を代表して国民に謝罪する事態となった。「チョン牧師と彼の教会は政治集団と化した。速やかに教会としてあるべき姿に戻るべきだ」と促した。

チョン牧師は本人が感染しても反省の言葉を1度も述べていない。あくまで「政府によるウイルステロ」を主張している。チョン牧師は入院先の病院で録音したと思われる音声を公開。21日夜、突然、韓基総代表会長の辞任を表明した。なぜ、このタイミングで辞意を表明したのか。本人の口から辞任理由は告げられていない。

21日夜、警察はサラン(愛)第一教会に家宅捜索を行なった。防護服を着た防疫センター関係者が待機する中、警官隊が教会周辺を封鎖した。(画像:キリスト教ポータルニュース)

21日夜には反政府集会に参加した教会信者の名簿を押収するため教会に立ち入ろうとした当局と教会関係者との間で激しい衝突が起きた。ネットを通じて集まった部外者も合流し、教会のクラスターは国による陰謀だと訴えた。深夜にもかかわらず、大音量で賛美歌を流し、通声祈祷を行なった。通声祈祷とは一般に大きな声でいっせいに祈る礼拝形式のひとつ。韓国では特に体を激しく揺らし神に祈りを捧げる文化が定着している。

大声をあげ、なかには聖霊がくだったと言って全身を激しく震わせるなど異様な姿に現地のクリスチャンから「本当に迷惑だ」と批判が集中した。現地メディアは「トランス状態に陥った信者が警察官に襲いかかった」とも報じた。相当な混乱ぶりをうかがわせる。

21日夜、サラン(愛)第一教会を支持する極右系ユーチューバーと警官隊が衝突した。(画像:キリスト教ポータルニュース)

一部の教会関係者は泥酔しており通行人にも暴力を振るい、激しく抵抗した。そして逮捕者も出る騒ぎに発展した。警察は捜査令状を請求。教会への家宅捜索が行なわれた。韓国メディアは、チョン牧師の隔離入院期間が終わり次第、警察は感染症予防法違反の容疑で逮捕に踏み切るのではないかと報じている。

韓国基督教総連合会という連合団体は社会的地位を失ったばかりか、経済面でも困窮していることがわかっている。チョン牧師は異端解除したピョン・スンウ氏から数千万円の賄賂を見返りに受け取った買収の容疑でも在宅起訴されている。巨額の富は会長の懐に収まったままだ。チョン牧師は辞意を表明した音声の中でまるで他人事のように語った。「今後、韓基総が代表会長を選出し、韓基総と韓国教会の復興のために最善を尽くすことを願う」。

チョン牧師により崩壊した信用を取り戻すことは至難の業だ。主要教団はすでに韓基総の存在は意味をなさないと即時解体を強く求めている。一方的な辞意表明を受け、今後、韓基総がどのように対応するか注目したい。