ウィリアム・ウッド氏

前編に引き続き、エホバの証人問題と国内の教会カルトについて語っていただいた。後半はエホバの証人の組織的な問題点から対応、相談に至るまでボリュームのある内容でお届けする。カルト被害で困っている方はウッド氏が運営する「真理のみことば伝道協会」にぜひ相談してみてほしい。

ー国内の教会信者から相談があったそうですがどんな内容だったのですか?

ある女性からの相談でした。自分の夫がネットで何やら良い教会を見つけたと言い出して、京都にある聖神中央教会に通うようになったという相談でした。夫は、平日は都内で仕事をしていますが金曜の夜になると新幹線に乗り、京都の教会まで通うようになりました。週末は教会で礼拝を捧げ、活動に没頭し日曜の夜遅くに家に戻る生活を繰り返していたのです。妻はとても不安になりました。心配で色々指摘すると「牧師は神に選ばれた預言者だ」と夢中になっている様子でした。妻に対し、「おまえはサタンだ」と人が変わったように批判的になったそうです。夫はその教会で歓迎され、すっかり魅了されていました。永田牧師(現・受刑者)から「あなたが来たのは聖霊の導きだ。しかし、あなたが来なくなったら聖霊に罪を犯すことになる」と言われていたのです。歓迎しながら一方で脅されていたことになります。これはカルトでよくみられる特徴のひとつです。

「夫を救出してほしい。」妻の希望で横浜にある支部教会で夫と面会しました。彼はすでに妄信的になっていました。驚いたのは、礼拝堂に入ると巨大な額縁に教祖、永田の写真が飾られていたことです。2時間くらい話しました。彼は聞く耳を持ちませんでした。私は永田がすでに多数の性的問題を起こしている情報を得ていたので彼にその事実を伝えました。彼は拒絶し激怒しました。結局、この男性を救出することはできませんでした。この衝撃的な出来事を通じてエホバの証人だけでなく、教会の中で起きるカルト化についても本にしたいと思わされました。批判は覚悟の上でした。誰も書きたくないテーマでしょう。ただ、これはなんとかしなければならない事態だと思い決心しました。2003年のことです。

ー実際に事件が起きたわけですね?

はい。起きました。本を出版して1年後のことでした。ある女性から相談を受けました。その内容はびっくりするようなものでした。「私の娘が聖神中央教会の永田牧師から性的虐待を受けている」という内容だったからです。

その方は被害者の娘さんのお母さまでした。「ウッド先生の本を読んでやはりこの教会はおかしいと思うようになりました」と仰ってくれました。被害状況は具体的なものだったので「警察に相談するべきです」とアドバイスしました。すると「警察に・・・神の器を訴えることは・・・」と動揺している様子でした。とっさに牧師を守らなければならないと拒否したのです。ここでは、牧師が絶対的な存在であり、その命令に従うように教育されていたので被害者の母であってもすぐに行動に移せなかったのです。その後、粘り強く説得しました。こうして母親は警察に被害届を出し、永山は警察に逮捕されました。ニュースでその一報をみた時は本当に驚きました。この本を書いてよかった。役に立ったと思いました。

ーこの教会にはカルト的体質が染みついていたのでしょうか?

この教会が事件を受けて空中分解した後、信者をフォローするため中心人物と食事をしたことがあります。その時、ひとりの女性信者が「先生の飲み残しの水を私にいただけませんか」と尋ねてきたのです。「一体何を言っているのだろうか」。聞けば、牧師の飲みかけの水を飲むことは特別な恵みがあると教えられていました。牧師に握手すると祝福、体にふれると力を得ると信じていたのです。この教会メンバーにとって最大の祝福は神の器である牧師(永山)と性的関係を持つことなのだ」と。この教会は韓国で異端、カルトと規定されている聖楽教会・金箕東(キム・ギドン)が提唱するベレヤ神学を軸とする教会でした。悪霊追い出し、奇跡体験(癒し)に傾倒し、それが出来る特別な存在に従うことが求められたのです

ー先生の本を通じて被害者家族が解決に向けて動いた?

被害者の母親はこう言ってくれました。「本を読んで牧師のいいなりにならなくて良いと思うようになりました」。永田は懲役18年の実刑判決を受け現在も服役中です。そろそろ出所するという情報もあります。

カルト研究リハビリ・センターは定期的に運営されている。

ー現在はどのような活動を続けているのですか?

真理のみことば伝道協会で同じ思いを持つ牧師たちと協力しながら定期的にカウンセリングとリハビリを行っています。自助グループ「いたんだ葦(あし)の会」では、年6回の集いに15名程集まります。エホバの証人、モルモン教・・・様々なところから来ます。他に個別相談がよく来ます。電話によるカウンセリングではなく相手の顔を見ながらお話を聞きたいのですが、遠方の方は難しいようです。基本的には自宅で会いますが相手の希望に合わせることもあります。

ー最近の相談で特に記憶に残ったエピソードはありますか?

これは悲劇的な話ですが、実際に相談を受けている例を紹介します。三十年近くエホバの証人を頑張ってきたある女性から相談が入りました。エホバの証人が原因でご主人とトラブルになり離婚してしまいました。その方のお母さんが娘(離婚した)を救出するために「間違った宗教ではないか」「家庭を壊しているではないか」と懸命に訴え続けてきました。いくら説得しても聞く耳を持たなかったそうです。ある日、そのお母さんはマンションから飛び降り自殺してしまいました。自分が自殺することで命に代えて伝えたかったという理由でした。悲しみに暮れた娘さんがお母さんの部屋に入ると箱があったそうです。その中にはエホバの証人に関する資料がたくさん仕舞ってありました。「母は命がけで私に訴えたいことがあったのだ。耳を傾けよう」。そこで彼女は、何が本当なのか調べたいと相談してくれました。ただ、まだ十分に整理できたわけではありません。エホバの証人は厳しいルールがあります。「クリスマスを祝っていいのか」などと葛藤しています。

ーそんなに厳しいルールがあるのですか?

あります。クリスマスは異教徒が祝うものだから祝えません。誕生日も祝ってはいけません。人間崇拝にあたると教えています。彼らは聖書的根拠があると言っています。新約聖書でヘロデ王がパーティーでバプテスマのヨハネの首をはねたところを引用し「だから、聖書は誕生日を祝うことを禁じている」とこじつけています。他にも子どもの行事に参加すること、PTA活動はもってのほかでしょう。剣道、柔道なども争いになるのでやってはいけません。選挙で投票することも禁じています。あらゆることが極端です。

ーエホバの証人というと輸血を拒むイメージがありますが?

はい。今もその教えを忠実に守っています。輸血は禁止されています。亡くなる方が大勢います。

ーカルト問題の難しさはどこに?

教会で考えた場合は、その教会内の霊的DNAはそうそうには変えられないということでしょうか。体質は引き継がれていく傾向が強いと感じました。

ー日本人はなぜカルト被害を受けやすいのでしょうか?

カルト問題は日本だけではなく世界中で深刻な状態にあります。ただ、思うのは日本人のなかには他人にコントロールされやすい点があるのかなと思います。絶対的な権威を主張する指導者についていく人が多いのですね。一概には言えませんが、アメリカ人は自分で判断して決断します。日本人はそれが苦手です。依存してしまう傾向もあります。根本的な原因は自信のなさからきています。セルフイメージが低いからでしょう。これが長年この問題のカウンセリングを続けた結論です。男女問わず、この傾向は強いと思います。特に人生経験が浅い若者は自分で物事を決める自信がありません。指示してくれる人がいると安心してしまうのです。

ーカウンセリングで気を付けている点を教えてください。

私はとにかく相手を励まします。セルフイメージが低いためです。もちろん色々なやり方があります。相手が聖書を信じている場合、あなたは神様に造られた存在で素晴らしい賜物がありますと教えます。相手に指示をしてはいけません。あくまで応援する役割です。

 

エホバの証人について聞く…..輸血は聖書に反するのでNG ルールが多く傷を負い、家庭が崩壊するケースが多い。性犯罪が横行した米国では訴訟続き….

エホバの証人公式サイトから。輸血を禁止する項目がある。聖書に反するという特異な教理が悲劇を招く場合はあるとウッド氏は指摘する。

 

ーエホバの証人の元メンバーはどのような傷を負っているのでしょうか?

宗教のタイプにもよりますが、エホバの証人のケースでお話ししましょう。やはり組織からの要求がとても多いので精神的に疲れ果てウツ病になる方が多いです。

彼らは週に3回、4回と集会に出席し、伝道にも参加しなければなりません。次にルールがあります。クリスマス、誕生日は祝えません。未だに輸血も禁止しています。こうしたルールは家庭を崩壊させる原因になります。模範的なエホバの証人にならなければなりません。そうしないと救われないからです。長老(リーダー)がいて、長老から認められるような存在にならなければいけない。他のカルト同様に信者は演技をします。模範的な信者を演じつづけます。伝道が苦手な人もいます。家庭訪問は本来誰でもできること働きではありませんから。心の中ではやりたくない。でもエホバの証人ではやらなくてはいけないのです。駅の周辺に立って伝道している姿を見たことがあると思います。独特な笑みを浮かべています。彼らは「私は喜んでいます」と偽物の笑顔を作らないといけません。そう教育されるからです。組織に対して適当に振る舞う信者はいないので真面目に頑張り続けます。うつ病になっても組織にカウンセリングの知識を持つ人はいないので「もっと祈りましょう。もっと努力しましょう」と、一番言ってはいけないことを言ってしまうのです。

ーエホバの証人では暴力事件などは起きていますか?

暴力事件の実態については聞きませんが、アメリカでは若い信者が組織内で性的虐待を受ける事件が後を絶ちません。これはアメリカで大きな問題になっています。次々と訴訟が起きています。エホバの証人はニューヨークのブルックリンという超一等地に本部を構えていましたが、不動産を売却し田舎に移転しました。裁判は連敗続きで賠償金を確保するためだと考えられます。もともと無理のある組織なので必ず亀裂が生じるのです。

ーエホバの証人とキリスト教の違いは?

大きな違いはイエス様を神とは認めないことです。信じて救われ義とされる「信仰義認」も否定します。イエスは最初に造られた大天使ミカエルだと信じています。彼らは韓国系カルトのように教理を隠しません。聞けばそう答えます。

ーエホバの証人をカルトだと考え救済活動に取り組む根拠はどこにあるのでしょうか?

私たちは人間社会に破壊的結果をもたらす宗教をカルトと考えます。そのためには社会に対してどのような被害が出ているか、まず調べなければなりません。実際に被害を確認できればカルトと理解していいでしょう。エホバの証人は輸血拒否による年間の死亡者が全世界で数千人です。先ほども述べた通り、信者が病んでしまう率が高い。家庭崩壊、離婚も後を絶ちません。この宗教は妻が信者で夫は信じていないケースが圧倒的に多いですが、妻は組織に従い、地元で伝道をするので夫にとって大変なストレスになります。夜の集会に平気で出掛け、家に不在になります。わかりやすく言えば組織が本当の主人になってしまうのです。「信じるのはいいけど頼むから地元で伝道はしないでほしい。迷惑をかけたくないから」こうお願いしても聞く耳を持ちません。私はある会衆(教会のこと)の名簿を手にいれました。40人中、10人のリストにマークがついていました。これは夫婦間でトラブルになっているという内部リサーチのチェックでした。彼らは家庭事情を把握しています。日本には約3500の会衆(教会)があります。信者数は約20万人です。この教会で同じように離婚、トラブルが起きていたとすると4万件の家庭に問題が生じている計算になります。子どもたちも被害者です。傷を受けています。献金の強要はありませんが、年に1回発行される内部の機関紙には、過去に信者の生命保険の受取先を組織に指定したり、遺産の相続先もエホバの証人にするよう推奨する案内が載ることがありました。そして、批判されると「サタンだ」「迫害だ」と主張します。

 

エホバの証人はハルマゲドンを無事に生き抜くかにかかっている…..忠実な人は滅びない…..自分と同じ自分が再創造される?

ーエホバの証人の目標はどこにあるのですか?

彼らの目標はハルマゲドン(終末)をいかに無事に通過できるかです。最後までエホバの証人に忠実な人は滅びないで生き残ることができると信じています。聖書的比喩である14万4千人という数字については実際に天国へ行く人の数としてカウントしています。天に行った人はこの地球をキリストと共に治めると考えています。

ー信者数は全世界で600万人程だと聞きましたが?

はい。14万4千人以上いることになりますね。この宗教は死んで天国へ行くことには興味がありません。地上の楽園に残りたい、ハルマゲドンを通過して仲間と地球を楽園の状態に戻すことを信じています。楽園を作るには100年くらい掛かるが死者は復活するのです。この復活の概念がキリスト教とは異なります。エホバの証人は死んだら無になり存在しなくなると教えられています。復活の時にエホバがまったく同じその人を再創造するというのです。同じ人間ですがもう一人が完全な自分ではありませんから、これはクローンです。このあたりの疑問についは深く考えないようにしているようです。死んだらおしまい。こういう教えになります。ですから、聖書の教えとは全く異なるのです。

ー永遠のいのちという希望はないのでしょうか?

ハルマゲドンを通過して生き残る人だけが永遠に生きるという信仰です。そこが永遠という意味になります。ただし、組織に忠実であればという条件つきです。だから信者は一生懸命に伝道をしています。この宗教は過去に終末を具体的に指定して失敗しています。さすがに最近は言わなくなったようです。

ハルマゲドンを通過すると千年王国がはじまります。これだけで終わりではないようです。王国は終わるとさらに試練が待っているのです。黙示録20章の御言葉を引用しています。再び人々を惑わすサタンにより滅ぼされてしまうかもしれません。彼らの信仰は恐怖を煽るような内容です。彼らは恐怖と使命感で一生懸命活動しているのです。

ー聖書の教えとは異なりますね。伝道、努力、組織に忠実であることがゴールですか?

はい。そうですね。

ー今でも信者数は増えているのでしょうか?

日本では2000年頃まで順調に信者数を伸ばしていましたが、ここ20年は横ばいです。まったく増えていません。それでも国内に20万人程の信者がいます。1995年に終末予言が失敗して撤回したことも原因だと思います。

ーエホバの証人の問題から教会で起きたカルト事件まで、とても勉強になりました。最後に初めて教会に行く人に注意してほしいことがあれば教えてください。

初めて教会に足を運ぶ時は、牧師や指導層が権威主義ではないかまず見てください。牧師が教祖になっていませんか? 牧師の説教の中で「ただ従いなさい。あなたがたは何も考えなくて良い。無になりなさい」という教えが強調されていたら要注意です。信者同士の関係もよくみてください。教会では交わりといって教会員同士の付き合いを大切にします。自然体でしょうか。お互いに言いたいことを言えているでしょうか。演技していないか・・・健全な付き合いはなんでも思っている事を正直に言えるはずです。そこに気を付けてください。

ありがとうございました。

 

真理のみこと伝道協会 https://cult-sos.jp/