二世の感覚、日韓でかなりの温度差。献金目的の関連ビジネス、ノルマ達成、自分を痛めつける修練相変わらず

再臨のメシア故・文鮮明によりマッチングされた信者同士が参加する合同結婚式。最近では祝福式と呼ばれている。現在も韓国にわたりこのイベントは続けられている。(写真提供:被害者家族の会)

今はどうなっているのか。統一教会被害者家族の会、脱会者家族の協力を得て・・・

統一教会(正式名称、世界平和統一家庭連合)は韓国出身の故・文鮮明氏が再臨のメシア(キリスト)としてあがめられ信仰されている宗教団体だ。芸能人が参加した合同結婚式や、壺や印鑑を売るいわゆる霊感商法問題はあまりに有名だ。日本では統一教会=カルトというイメージが定着したことは事実だろう。これほど社会問題になっても依然、日本は統一教会の格好の資金源なのだ。日本人は忠実に献金を捧げるという。今回、被害者の会、脱会者家族の協力を得て最新の統一事情に迫ることができた。あれだけ世間を賑わした統一教会はどこへ行ったのか? 最近はマスコミも取上げる機会は減った。自民党を中心とした国会議員と統一組織の蜜月な関係は昨年の名古屋大会でも浮き彫りになった。現職の議員が合同結婚に参加していたのだ。

この団体も決して一枚岩ではない。教祖だった文鮮明氏が2012年9月に92歳で死去すると、「神の摂理」という組織の教えが次々に変更されていった。再臨のメシアが死に、内部紛争が勃発。その混乱を制するかのように文氏の妻“韓鶴子”(ハン・ハクジャ)が最高権力者に君臨した。そして韓氏は亡き夫、文氏に「原罪があった」と宣言。原罪とは人間が生まれながらに持つ罪をいう。十数年にわたりメシアとして崇めさせた教祖は「単なる人間にすぎない」という発言をしたことになる。統一教会の教理はイエス・キリストが再臨する際、イエスと同一ではない使命を持った人物が“メシア”(救い主)として地上に表れ、地上で神の国を建設するという教えだ。それが「真のお父様」と称する文鮮明だった。彼らの理論からすれば、使命があればメシアは誰でも良いということになる。だから妻の韓氏は自分こそが本当のメシアと宣言したのだ。

信者からすれば多くの矛盾に動揺したことだろう。それでも信者たちは「なぜ?」と考えることは許されない。「いずれ、わかると教わるんです・・・」こう語るのは、脱会者家族Bさんだ。自分で考えず組織に言われるとおりに自分を変えていく。統一教会が韓国主要教団から異端であり、カルト集団と規定されている理由も頷ける。

高額な献金を指示 払えないと翌月繰り越し 実態を隠した関連ビジネスが横行

信者は内部では「食口(シック)」と呼ばれている。韓国語で家族以上の存在「ファミリー」を意味する。最新情報によると日本人の月額献金額は教区、区域により多少異なるという。21万円のところもあれば36万円と決められた教区もある。常識的に考えて払えない額に思える。脱会者によれば「払えないと翌月に繰り越されます」という。献金を指示する暗号もある。「HK(早く献金)とLINEで送られてきます。以前はFAXが多かったけど」。イベントや大会があればそれ以上の献金がかさんでいく。

本来、献金とは自由意志で捧げるものだろう。翌月繰り越しとなれば、これは半ば強制になる。特にこの2月に行なわれる大型イベントに向けた献金は一人10万円と決められ、強制に近い指示を受けているという。借りた金を返すのと話が違うはずだ。献金確保のためにカードローンを組んだり、統一教会の関連企業の製品を販売しながら稼いだ金を捧げているのだ。「親戚にお金を借りる人もいます。皆、必死です。」そう嘆くのはAさん。「表向きは個人経営の店舗です。オンラインショップも沢山あります。代表らが統一信者でもそれは言いません。収益が組織に流れるシステムはそこら中に存在します」と関係者は語る。本紙もいくつかの関連ビジネスを確認することができた。化粧品、健康食品、絵画、宝石に印鑑。価格は高額なものが多く、洗濯洗剤を一本5千円で売るケースもあるという。こうした企業、団体も登記上はいち信者(個人)であり、統一教会や文鮮明氏との関係は隠されている。だから追及しても「自分の店だ」「自分が設立した」と答えることができる。だが、脱会者らの証言や霊感商法対策弁護士連絡会の努力の結果、近年はこうした違法ビジネスに関連して統一教会地方支部が指示を出していたことが立証され、責任者が摘発されるケースも出ている。

 

1800双、合同結婚式の様子。今日の統一教会最高幹部クラスの多くがこの合同結婚に参加していた。(提供:脱会者家族)

合同結婚式は今も行なわれている。再臨のメシアがマッチング

統一教会といえば教祖による信者同士のカップリング“合同結婚式”があまりに有名だ。正式には祝福式という。今回、特別に資料を入手した。今も合同結婚に向けた信者同士のマッチングが行なわれていることがうかがえる。提供者によると、合同結婚を挙げた夫婦から生まれた子ども(二世)のためのマッチング確定者の日本訪問ツアーの資料だとう。

マッチングの実態を示す行程表。日本の千葉で新年に行なわれた。日程が記載されていないが2月の合同結婚式まで何回か行なわれる模様だ。(提供:脱会者家族)

二世の心情は複雑だ。意外にも韓国側は信仰心が薄く、むしろ日本人の方が組織にのめり込んでいるという。「選ばれたカップルは韓国へ渡り合同結婚式に参加します。お互いに言葉が通じないので音声アプリを使って会話します」。「韓国人は冷めているけど日本人は熱心な場合があります。そうなると夫婦は釣り合わなくなるんです」。こう語るのも被害者家族の某氏。夫婦になっても3年間は一緒に暮らせない。それも奉仕に駆り立てる仕掛けだ。過去に合同結婚式に参加した某氏(女性)は「合同結婚後は韓国に派遣されて3年の間、無償で奉仕しました。日本人女性は韓国各地に派遣され、世界日報(統一教会の新聞)配達をさせられました。もちろん無報酬です」と話す。労働搾取がこの組織の重大な問題の一つだ。

再臨のメシアに君臨した統一教会最高指導者“韓鶴子“氏。(統一教会のTV番組より:本紙掲載画像)

地上天国の完成日がまもなく迫る!?

韓鶴子氏が全権を掌握し、「真のお母様」として崇められる中、統一教会は地上天国の完成日もガラリと一転させた。文氏は生前、「2013年1月13日までに私の責任を果たすだろう」と発言していた。これは統一教会被害者名古屋自助グループの会員が運営するブログ「北風と太陽・保存版 統一教会から娘を家族のオープンな話し合いで取り戻した父kokoroのブログ。」で紹介されている。韓国の異端専門誌「月刊現代宗教」(2010年3月号)が報じたものをグループが許可を得て一部翻訳したものだ。文氏が言う「責任」について本人が正確な意味を明らかにしなかったため内部でも意見が割れていたという。その後も文氏は講演会で「1月13日までに天一国を完成しなければならない」と発言を繰り返したことで、地上天国の完成を指示と受け止められたようだ。この1月13日は旧暦にあたる。

ところが、2013年9月、文氏が死去すると内部の摂理(教え)が一変した。地上天国の完成は旧暦の2020年1月13日になったという。陽暦だと2月6日にあたる。現在も「VISION2020」というタイトルを掲げ大型イベントを予定している。言葉通り理解すれば、今年2月6日は地上天国完成日ということになる。内部資料によれば5日~8日の行程で故・文鮮明氏の誕生を祝う「御生誕100周年記念ツアー」が企画されていた。日本人の参加費は一人¥83,000。参加できない信者はさらにプラスした献金が求められているという。大勢の日本人が韓国へ渡り、二世の合同結婚式も行なわれる見通しだ。

しかし、摂理は確定ではない。過去にも教祖の都合に合わせて何度も変えられてきた歴史がある。また地上天国の完成も断定は出来ない。内部では完成なのか国家復帰(宗教統一)の完成なのか、はっきりしていないという情報もある。

地上天国完成に合わせたイベントになるのか?文鮮明氏の生誕100周年を記念したツアー。世一観光も統一教会の関連企業だ。(提供:脱会者家族)

この地上天国とは、内部では「父母と子供の間に完全一体ができ、一人の神さまのもとに全ての天主がひとつの家族として住む」という統一王国を意味する。宗教が一つになり、彼らの教えで世界が一体になるという壮大な計画だ。

山の麓に見える白い建物が統一教会の聖地“清平”の修練院。(提供:脱会者家族)

統一教会の聖地“清平”

韓国の京畿道にある清平(チョンピョン)が統一協会の聖地とされ、修練院という建物がある。信者はこの聖地を目指して韓国へ渡るのだ。ある脱会者は「普段は温厚な組織でも聖地に入ると状況は一変します。絶対服従を強いられます」と述べる。過去には騙されて清平に連れてこられた元信者もいる。韓国人幹部からパスポートを取り上げられたという証言もある。

聖地清平では役事(やくじ)という特別な儀式が行なわれる。それは悪霊を追い出すために自分の体を叩くという儀式である。キリスト教にこのような教えは一切出てこない。役事とは、「体内に細胞単位で入り込んだ悪霊を出すために全身を狂ったように叩きまくる行為。この儀式は清平以外では悪霊を追い出せないため他では行なわない。決まった聖歌を大声で合唱しながら体を叩き、最も大事なのは儀式の最中に指先をそろえ手の全体で拍手すること。絶対全霊や天使たちが入ってくるからだ。時間にして30分から50分。最後に全員でアボジー!(お父様:文鮮明)と長く叫び全身を1分ほど叩きまくる。その後、丹心歌を2回全員で合唱。歌をBGMに祈祷の時間に入り最後にマンセー(万歳)と叫ぶ」(被害者家族の会某氏ブログ引用)。過去には儀式が原因で自殺者も出ている。本来、食口(信者)全員がしなければならないが、韓国人はやらないで日本人女性ばかり「自分の体」を叩いているという。幹部クラスは「役事は必要ない」と言っているようだ。日本人には悪い霊が宿っていると指導されることもある。

統一教会は未だ多くの信者を抱え、驚くべき活動を続けている。被害者家族はこの真実を世に明らかにするために弁護士、専門家と協力しながら奮闘している。今一度この団体の実情に目をとめるべきではないだろうか。

 

本編は統一教会被害者家族の会メンバーの協力を経て取材、編集しました。(本紙は旧名称の”教会”のまま表記します。)